研究概要 |
本研究では,石油増回収のための油層内微生物増殖法の確立を目指して,擬似油層を用いた室内実験および数値解析を行い,以下の知見を得た。 1. 擬似油層として1mmのガラスビーズを充填した二次元の充填層を作成した。本充填層を用いて,栄養塩の移動およびシャットインの影響について塩化カリウム溶液によるトレーサー試験を行った。その結果,塩化カリウム溶液は密度差から生じる対流により,沈み込みながら流れることが明らかになった。また,十分に増殖させた通性嫌気性細菌である乳酸菌の懸濁液を上記の充填層に注入し,擬似油層における微生物の移動挙動を検討した。その結果,微生物は充填物の隙間などに詰る「クロッグ」という現象を起しながら流動することが認められた。クロッグ現象は,流速に依存し,流速が遅いほど現れやすいことを見いだした。 2. 上記の実験結果をふまえ,栄養塩および微生物の移動現象を表す数学モデルを作成した。本モデルは,栄養塩については物質移動に寄与する移流と混合拡散の割合を表すペクレ数と密度差による対流の効果を表すレイリー数という2つの無次元パラメータを用いることにより,微生物についてはさらにクロッグ現象を表す係数を定義することにより,擬似油層における栄養塩の移動 3. 作成した数学モデルにより、二次元空間において浸透率に分布が存在、かつ微生物のクロッグ現象により浸透率が変化することを想定し,ケーススタデイを行った。浸透率の分布は垂直方向のみに存在する(実際の油層と同様の傾向)とした。また,浸透率の時間的かつ空間的変化は,コゼニー・カーマンの式から求めた。その結果,わずかな浸透率の違いにより栄養塩および微生物の濃度分布に大きな差が生じることが認められた。 4. 充填層における増殖実験を行った。結果,通常の液体培養よりも大きな増殖速度が得られた。その速度は,充填物の粒径が小さいほど大きくなることが認められた。
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