研究概要 |
本研究はカンショにおけるスクローストランスポーター(SUT)の特に塊根形成における役割を明らかにするため,SUTの一次構造と各器官及び塊根形成過程の根における遺伝子の発現様式について検討した. カンショの塊根より3種類のSUTのcDNA(それぞれIbSUT1,IbSUT2及びIbSUT3と名付けた)が得られた.IbSUT1,IbSUT2及びIbSUT3とジャガイモ,シロイヌナズナ及びソラマメのSUTとは,塩基レベルで60〜72%,アミノ酸レベルで58〜77%の相同性を示した.また,ゲノミックサザン分析からカンショのSUT遺伝子は少なくとも2コピーの遺伝子から成るスモールジーンファミリーを形成していると考えられた.IbSUT1,IbSUT2及びIbSUT3をプローブとしたノーザンブロット分析ではそれぞれ約3.1kb,約2.4kb及び約1.6kbの位置に一本のバンドが検出され,カンショの3種類のSUTは種類によってmRNAのサイズが異なっていた.器官別のSUTのmRNAレベルを比較すると,IbSUT1のmRNAは各器官でほぼ同レベルであった.IbSUT2のmRNAレベルは葉柄と若根で高く,葉身,ほふく茎及び塊根ではそれらの50%以下であった.IbSUT3のmRNAレベルは葉柄で最も高く,他の器官ではその約30%程度の発現量であった.塊根形成過程の根では,IbSUT1のmRNAレベルは期間を通じてほぼ一定であったが,IbSUT2とIbSUT3のmRNAレベルは経時的に低下した. 以上の結果より,カンショには少なくとも3種類のSUTが存在し,それらの遺伝子の発現は植物体の各器官及び塊根形成過程の根において異なっていることが明らかとなった.
|