研究概要 |
アフリカイネ(Oryza glaberrima)の祖先野生種,O.breviligulataは種々の形質においてアフリカイネより変異幅が大きく,また乾物および子実生産力も劣っていなかった.しかし,Series Glaberrimaに属する3種(上記の2種に加えてO.stapfii)およびそのF1雑種およびF2雑種は,多げつ性が細茎と結びつきやすく,またSeries Sativaに属する4種,アジアイネ(O.sativa),O.rufipogon,およびO.longistaminataと比較して,出穂後の乾物生産力の低下が著しいことが示唆された.これらは,アフリカイネの育種プログラムに果たす祖先野生種の遺伝子資源利用の可能性と限界を示すものである. アフリカイネは,葉身窒素レベルが低いとき,葉身窒素含有当たりの光合成速度がアジアイネより高いことを明らかにした.これは,アフリカイネの気孔伝導度が葉身窒素含量に対して非依存的で,葉身窒素レベルが低いときの値が高かったこと,また葉肉伝導度も高かったことによるものであった.このようなアフリカイネの光合成特性は,アジアイネの光合成,特に低窒素条件下での個葉光合成能の改良のために導入されるべき有用な遺伝形質であると考えられた. 水ストレスの付加とその後の回復過程から,アフリカイネ系統C174は,水ストレスに対してアジアイネ系統C70より感受性であることを明らかにした.その原因として,C174はRubisCO活性の低下が著しく,根の活性低下も大きかったこと,さらにFv/Fmの低下が生じたことが関係していた.アジアイネとアフリカイネの種間F1系統は,両親系統よりも個葉光合成速度を高いレベルまで回復できることを認め,種間交雑による水ストレス耐性の付与の可能性を示唆した.
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