研究概要 |
ブラシノライドよる低温ストレス軽減効果に関して,低温ストレスのシグナル伝達を司るマーカーを探索する材料として,キュウリ幼植物よりイネ幼植物が材料として優れていた。イネ幼植物の低温ストレスに対するブラシノライドの効果は根の成長に顕著に現れ、その軽減作用はストレス負荷前にブラシノライド処理したときに効果的現れた。ブラシノライド処理によって根の酸化力が急激に増加していることから,ブラシノライドは根の成長や養分吸収機能を促進させ,これによって低温ストレス応答のシグナル伝達機能が活性化され,軽減効果が生まれるものと考察できる。ストレス軽減効果は湿度の影響を受け易いことも明らかになった。一方,ストレス軽減効果に対するブラシノライドの持続時間が短いことが見いだされた。植物組織内でのブラシノライドの代謝回転が速いことが示唆されたのでキュウリ幼植物による代謝を調べた。吸収されたブラシノライドは速やかに異性化を受けた後に糖や脂肪酸と複合体を形成してしまうことが明らかされた。代謝の最初の段階で生成される異性体およびその後の複合体については,機器スペクトルデータの解析,標品化合物の合成やキュウリ培養細胞のブラシノライド代謝物とのスペクトルデータの比較や解析により構造決定を進めているが同定するまでに至っていない。安定なブラシノステロイド類のデザインについては,オーキシンと同定度の活性を有する数種の酸性ブラシノステロイドを合成した。これらの化合物の低温ストレス軽減効果とその活性の持続性に関して確認する必要がある。
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