研究概要 |
ラミニンは基底膜と呼ばれる上皮や内皮細胞層の裏打ち構造に含まれる主要な糖タンパク質で、組織細胞の遊走、増殖や分化に作用する。ジスルフイド架橋されたα鎖、β鎖とγ鎖が会合して、3本の短腕と1本の長腕を持つ十字架構造をしている。近年、多数のラミニン異型体がヒト及びマウスで発見され、その構造と機能の研究は複雑な様相を呈している。α鎖の異型体が5種類、β鎖の異型体が3種類、γ鎖の異型体が2種類発見され、これらが様々に組み合わされた11種類の三量体が知られている。ショウジョウバエでは、α鎖、β鎖とγ鎖が各一種類しか発見されておらず、哺乳動物に比べて解析が単純である。本研究では、ショウジョウバエとマウスを並列させてラミニンの機能を究明した。 本研究の実績は次のようである。1)鎖間会合に寄与する長腕配列を様々に欠失したマウスのα1,βl,γ1cDNAをサル腎臓由来のCOS1細胞で発現させると、内在性のサルのα1,β1,γ1と会合して雑種ラミニンを作ることを示した。2)ラミニン鎖の長腕における会合過程では、そのC-末端とN-末端が異なる役割を果たしいることを示した。3)ショウジョウバエ・ラミニンを大量合成するKc167細胞を利用して、α,β,γが会合して分泌される順序を明らかにした。すなわち、i)個別に合成されたα,β,γ鎖は単独では分泌されず、ii)まずβとγが相互認識して会合するが、iii)この段階ではαは会合できず、iv)βとγが長腕C末端でジスルフィド結合されてからα鎖が会合して細胞外に分泌されることを示した。4)培養下で脂肪細胞に分化する3T3-Ll株はα4,β1,γ1のcDNAだけを発現しておらず、これらのmRNA量は脂肪細胞への分化に伴って増加し、それらの産物が会合したラミニン1(α4β1γ1)のみが脂肪細胞では形成されることを明らかにした。
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