研究概要 |
電気刺激により高率に活性化したブタ単為発生2倍体を用いて,1.ブタ初期胚の培養系を確立するために,浸透圧,アミノ酸の胚盤胞への発生に及ぼす影響,2.単為発生2倍体の体内発生限界と単為発生胎子の生産効率,3.ブタにおけるインプリント侯補遺伝子の単為発生胎子における発現性の3点について検討し,以下の点について明らかにした。 1.(1)全培養期間同一の培地を使用する場合,等浸透圧系培地(309mOsm)では,コンパクションならびに胚盤胞形成が阻害され,低浸透圧(256mOsm)系培地の方が適している。これはNa+/K+比の問題ではなく,たんに浸透圧の影響である。(2)活性化48時間までは,逆に等浸透圧系(280〜320mOsmol)の方が分割率が高く,72時間以降は低浸透圧(220〜270mOsmol)の方が適している。(3)培養液に含まれるウシ血清アルブミン(BSA)を合成高分子化合物の0.5mg/ml以上のポリビニルアルコール(PVA)に置換しても,胚盤胞までの発生率はBSAと同等であるが,拡張胚盤胞に発生する胚はPVAでは有意に低い。(4)必須(EA)ならびに非必須(NEA)アミノ酸の混合液(AA)を培養の初めから添加すると著しい。4-細胞ブロックが誘起され,無添加より発生率が低い。これはEAの添加が原因で,NEAはEAの4-細胞ブロックを緩和する。 2.(1)ブタ単為発生体は,体内で着床初期の25日齢胎子までの高い発生能力(41%)を示すが,発育遅延,小頭,尿嚢発育遅延などの異常が認められる。(2)28〜29日齢に流産が起こりやすく,体内での発生限界は30日付近である。(3)NMR画像により,頭部に泡状構造の存在が示唆されている。 3.25日齢の2倍体単為発生胎子におけるインプリント候補遺伝子の発現性を検討した結果,(1)マウスやヒトで明らかになっている大部分のインプリント関連遺伝子の配列が,ブタでは不明なことから,PCR用プローブを検討した結果,p57KIP2,PEG1/MEST,SNRPN,H19の4つの遺伝子においてブタ正常胎子からの増幅産物が得られる。(2)配列既知のIGF2,IGF2R,WT1ならびに上記の4つの遺伝子について,ノーザンハイブリダイゼーションと半定量的PCR法により正常と単為発生胎子で比較したところ,IGF2は単為発生で発現量がかなり低く,父性発現を示唆し,p57KIP2では同等であることから,母性発現,もしくは非インプリントを示唆している。
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