研究課題/領域番号 |
09470077
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 浩 熊本大学, 医学部, 教授 (90004613)
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研究分担者 |
宮本 洋一 熊本大学, 医学部, 助手 (20295132)
澤 智裕 熊本大学, 医学部, 助手 (30284756)
赤池 孝章 熊本大学, 医学部, 助教授 (20231798)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
11,900千円 (直接経費: 11,900千円)
1999年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1998年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1997年度: 7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
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キーワード | 細菌性プロテアーゼ / 病原因子 / matrix metalloproteinase / NO / 活性酵素 / パーオキシナイトライト / 活性酸素 / ブラジキニン / 敗血症 |
研究概要 |
今回の研究により、生体にとって外来性である細菌性プロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を活性化することを見出した。精製した3種類のMMP-1,-8,-9に対する、様々な病原細菌性プロテアーゼの活性化能を検討した結果、サーモライシン系に属する緑膿菌エラスターゼ、コレラ菌プロテアーゼ、そしてサーモライシンの3種類の細菌性プロテアーゼは、トリプシンと同等もしくはそれ以上のMMPの活性化能を有することがわかった。MMP-1,-8,-9の分子量は、活性化に伴いいずれも約10〜20kDa低分子化した。一方、セラライシン系である緑膿菌アルカリプロテアーゼ、セラチア菌56Kプロテアーゼ、およびチオールプロテアーゼであるセラチア菌73Kプロテアーゼでは活性化は認められなかった。細菌感染症は他の炎症病態と比べ、細菌性プロテアーゼという宿主にとって外来性のプロテアーゼが関与するという点で特異的な病態である。我々は、細菌性プロテアーゼによってブラジキニン産生カスケードの活性化や、免疫グロブリン、補体系といった感染防御に重要な生理活性物質の分解がもたらされ、感染病態が増悪されることを報告してきた。MMPの活性化物質は炎症増悪因子として従来より注目されているが、サーモライシン系の細菌性プロテアーゼはほかにもLegionella,Enterococcus,Staphylococcusなどの幅広い細菌属により産出されることから、この知見は細菌感染病態における組織破壊機序を考える上で、これまでになく重要であると考えられる。 さらに最終年度は、細菌感染に伴った炎症反応によって生ずる一酸化窒素(NO)および活性酸素(スーパーオキサイド、O2^-)の反応生成物であるパーオキシナイトライト(ONOO^-)によるMMPの活性化メカニズムの解析を行った。その結果、ONOO^-は、グルタチオン(GSH)存在下でヒト好中球由来のMMP-8およびMMF-9、さらにヒト線維芽細胞由来のMMP-1を著明に活性化した。HPLCおよびtime-of-flight mass spectrometerによりONOO^-とグルタチオン(GSH)の反応産物の解析を行ったところ、比較的安定な反応産物としてニトログルタチオン(GS-NO^2)が同定され、さらに、別途に化学合成したauthenticなGS-NO^2はMMPを強く活性化した。このことは、ONOO^-とGSHの反応こより生じるGS-NO^2が、MMPのautoinhibitory domain内のPRCGVPD配列中のシステイン残基を攻撃し、MMP活性化をもたらすことを示唆している。以上の知見は、細菌感染病巣において、病原体より産生されるフロアーゼのみならず宿主側因子であるNOや活性酸素が、MMPの活性化を介して組織破壊を増強させ、細菌感染病態に深く関わっていることを示している。
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