研究課題
基盤研究(B)
G型肝炎ウイルス(GBV-C/HGV;以下HGV)のウイルス学的性状を明らかにするとともに、高感度の検出法を確立し、HGV感染と疾患との関係を明らかにすることを研究目的とし、以下の成果を得ることができた。アジア株(GT230株[G3型])のHGVについて、世界で初めて全塩基配列(9390塩基長)を決定し、その特徴を明らかにした。アフリカや北アメリカ在住の感染者から分離されたHGV株(それぞれG1型とG2型)と同様に、C遺伝子領域は不完全であった。最も保存性が高い3′非翻訳領域を標的部位とするRT-PCR法を確立し、世界に分布する5種類全ての遺伝子型のHGVを特異的、かつ高感度で検出することを可能にした。我が国の一般健康人でのHGV RNAの陽性率は1.2%(15/1303)であり、妊婦でもその陽性率は1.1%(32/2979)であった。32名のHGV感染妊婦から生まれた児のHGV RNA陽性率は77%であり、一般健康人の集団でも高率にHGVの母児間感染が起こっていること、そして母親の血中HGV量が母児間感染の最も重要な危険因子であることを明らかにした。我が国の一般健常人や肝疾患患者のHGVではG3型が大多数を占め、非加熱血液製剤での治療歴を有する血友病患者ではそれ以外の遺伝子型のHGVが多く認められた。慢性肝疾患患者において、病因別のHGV RNA陽性率に差は認められなかった。また、HGV感染群と非感染群において、背景因子ならびに各種生化学的、ウイルス学的パラメーターに相違は認められなかった。HGV感染と肝病態との関連については、現在、世界的にも否定的な見解に至ってきている。しかしながら、ある特定のHGV株や突然変異によって生じた変異株が宿主の感受性の違いによって病原性を発現する可能性も否定できない。したがって、今後も追求を怠らず、監視を続けていくことが重要であると思われる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (26件)