研究概要 |
プロテアソームは,MHCクラスI分子によって提示されるペプチドを産生するプロテアーゼである.本課題では,クラスI分子による抗原提示を促進する機能をもつと想定されるIFN-γ誘導性プロテアソーム・サブユニットの構造・機能・起源を明らかにすることを目的として研究を推進し,以下の成果を得た. 1) IFN-γ誘導性20Sプロテアソーム・サブユニット遺伝子の起源:MHCの染色体重複モデルの提唱 IFN-γで発現が誘導される3個の20Sプロテアソーム・サブユニットは,クラスI分子による抗原提示システムが誕生した際に,構成的に発現されるサブユニット遺伝子が重複して形成されたものと考えられる.われわれは,1)この重複が,個々の遺伝子の重複ではなく,MHC領域を巻き込んだ染色体領域の重複の一環としておこったものであること,2)上記の重複は脊椎動物進化の初期段階,具体的には有顎脊椎動物の共通祖先におこったと考えられること,などを明らかにした.これら一連の研究により,MHCという遺伝領域のゲノム構成を理論的に説明する「MHCの染色体重複モデル」が提唱された. 2) IFN-γによって制御されるプロテアソーム・サブユニット遺伝子群のクローニングとその構造解析 IFN-γによって制御されるプロテアソーム・サブユニット遺伝子群を129/SvJマウスから系統的にクローニングすることにより,遺伝子構造と染色体局在を決定し,さらに発現制御機構の解析を行った.これまでに,20Sプロテアソーム・サブユニットMECLl,Z,XをコードするPsmblO,Psmb7,Psmb5遺伝子,およびプロテアソーム・アクチベーターPA28α,β,γサブユニットをコードするPsme1,Psme2,Psme3遺伝子の解析が終了している.現在,これらの遺伝子クローンを使用して,knock outマウスの作製が進行中である.
|