研究概要 |
慢性肉芽腫症は1991年をまでにその病因遺伝子であるgp91-,p22-,p47-,p67-phoxとrac p21が明らかになり、それぞれの遺伝子もクローニングされた。現在日本では220名以上の慢性肉芽腫症患者として登録されており、原発性免疫不全症候群の内で最も頻度の高い疾患となっている。年齢別の患者数から計算すると、25万人出生あたり1名の発生頻度であり、30歳を越える患者は少ないこと、地域集積は認められないこと、平均寿命は25歳から30歳であること、死因は主にアスペルギルスとカンジダ性肺感染症と細菌性肺炎・敗血症であることが明らかになった。病型分類ではgp91-,p22-,p47-,p67-phox欠損患者の割合は各々77%、7%、6%、10%であった。1997年から日本でも骨髄移植が本格的に行われるようになり、治療法として確立しつつある。一方、遺伝子治療はこの疾患が5%の正常好中球が再構築できれば、臨床効果が充分期待出来ることがgp91-phox konchout mouseを用いた実験からも明らかになってきており、遺伝子治療が有効な疾患としてその確立が大いに期待されている。我々は、PHa-MDR-IRES-gp91とMFGS-gp91レトロウイルスベクターを用いて、gp91-Phox欠損型慢性肉芽腫症患者樹立B細胞株に遺伝子導入を行った。その結果、in site hybridizationによる遺伝子導入、モノクローナル抗体による蛋白の発現、化学発光およびFACS解析による活性の再構築を確認した。さらに、米国立衛生研究所のHarry L Malech博士との共同研究により患者幹細胞への遺伝子導入を行い、上記と同様に蛋白発現、活性の再構築の確認がなされた(日本遺伝子治療学会報告予定)。また同様の事を日本の数名の患者でも確認できる予定である。これらの結果より、来年度にも学内の倫理委員会に慢性肉芽腫症遺伝子治療のプロトコールを提出する予定である。
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