研究概要 |
1.20人の正常人毛包370本からそれぞれmRNAを抽出し、種々の遺伝子の発現をRT-PCR法で調べた。その結果、ほとんどの毛包にFGF-1. -2, -5, -7, TGF-α, TGF-β1, HGF, IGF-I, P53, P21, P27, c-met, HGF activatorが発現していた。一方FGF-3, -4, -6, -9, IGF-II, P15, P16は全く発現していなかった。 2.免疫電気泳動包により毛包組織抽出液および血清中にHGF activatorを認めた。 3.マウス髭の毛包器官培養系に不活性型HGFを添加すると、毛包に内在するHGF activatorによってHGFが活性化されて毛伸長が認められた。さらにHGF activatorの阻害剤であるaprotininを添加したところ、HGF依存性の毛伸長は制御された。HGF activatorによるHGFの活性化がaporotininにより抑制されたと考えられた。 4.ヒトとヒツジのhigh sulfurprotein B2のcDNAを利用してプライマーを作製し、ラットのgenimic libraryをスクリーニングしてhigh sulfurprotein B2EとB2Fの遺伝子配列を決定し、その性状を明らかにした。 5.ラットの毛周期とcyclin dependentkinase(CDK) inhibitorの関連性を検討したところ、成長期に一致してp21.p27の発現が認められた。また、in situ hybridizationではp21の局在が成長期毛の毛皮質と毛球部上方の毛上皮細胞に限局していた。CDKinhibitorは毛上皮細胞の分化に関与していることが示唆された。 6.毛包を含む皮膚組織を週令の異なるラットから採取し、total RNAを分離して週令ごとにurokinase, PAI-1, nexin1, MMP-1, MMP-2, TIMP-1, TIMP-2, HGF activatorのmRNA発現をRT-PCRにより比較した。その結果、HGF,HGF activator,urokinase, PAI-1, nexin1, MMP-2, TIMP-1が有意に成長期に強く発現していた。 細胞成長因子受容体のantisenseオリゴヌクレオチドによる毛の周期的成長促進効果の検討と、HGFをphosphatidylcholineを基にしたliposomeに包理してマウス背部毛の成長促進効果を検討する実験は現在実施中で未だ確定的な結果を得ていない。
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