研究概要 |
平成9年度はラットを用いた心阻血・再灌流実験系で心力学的機能解析を行うべくモデル作製のため研究努力したが手技士の問題点を解決できず、実験モデルを確立できなかった。平成10年度にはビーグル犬を用いフッ素化合物乳剤FC43se(perfluorotributylamine/pluronic F-68 stem emulsion)投与が、体外循環(人工心肺回路)後に阻血再灌流した心臓の機能保全効果を示すかを検討した。成犬で60分間の体外循環を行い、36℃復温後に30分間の温阻血負荷ののち自己拍動再開させ、30、60分後の(Emax,peak positive dP/dt)測定し、ポンプ前値との変化率(回復率)を計測。コントロール(C)群は再灌流直前に冠動脈内に生理食塩水10mlを、FC43se投与(FC)群は10mlのFC43seを投与した。また30、60分後の病理検討を加えた。[結果]1.Emax:FC群(前値19.0±1.7mmHg/ml,30分後回復率73.4±11.3%,60分後回復率96.0±7.1%)、C群(前値20.5±3.4mmHg/ml,30分後回復率52.9±11.4%,60分後回復率88.9±8.1%)で30分後値で2群間に差を認めた。2.max dp/dt:FC群(前値3555.3±349.3mmHg/s,30分後値回復率59.9±14.5%,60分後回復率81.2±15.9%)、C群(前値2834.1±427.6mmHg/s,30分後回復率49.8±20.3%,60分後回復率85.9±16.9%)で30分、60分後値とも2群間に差を認めなかった。病理像では各時間において2群間での差は認めなかった。[結論]FC43se投与は体外循環後、早期の心機能回復効果を持つ可能性が示唆されたが、充分な効果は証明し得なかった。
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