研究概要 |
1)Maze手術の改良の開発 平成9・10年を通じ心房表面電位マッピング調査によって,心房内のfiring pointが肺静脈入口部付近に集中し,これによりAFの発生が強く示唆された。また一方で,僧帽弁輪への心房隔離線の作成が不完全となり,心房頻脈を合併することが,electro-anatomical mapping systemを用いた検索で明らかとなった。 そこで,Maze手術の左房切開線を簡略化し,かつ心房頻拍を予防する目的で,肺静脈入口部を含む左房後壁の隔離のみとする改良法を平成11年度から施行した。その結果心房頻拍の発生率は23%から0%となった。しかし除細動効果については,今後の遠隔成績を待たなければならない。 2)Maze手術の術後遠隔成績 Maze手術を僧帽弁膜症と合併施行することの安全性と,その効果(除細動率75%)を明らかにし,洞調律回復が得られる指標として心電図上のf波高と心エコー図上の左房径が有用であることを示した。 そしてMaze手術100例の術後平均44.6ヶ月の追跡では,実生存率87.8%(5年),NYHAクラス平均1.5±0.5と良好であった。しかし,Kaplan-Meier法による洞調律維持率は経年的に下降し,術後1年88.8%から術後5年64.8%と低下することが判った。このことは僧帽弁膜症に合併する心房細動のマクロリエントリー説,あるいはそれに基づくMaze手術の限界を示唆するもので,今後は心房細動の予防を含めた総合的な取り組みが必要である。
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