研究概要 |
骨系統疾患は、先天性に骨・軟骨の成長・発達の障害をきたす遺伝性疾患の総称で、200以上もの疾患が知られている。本研究では、遺伝子レベルでの骨系統疾患の診断方法を確立することを目的として、様々な骨系統疾患の疾患遺伝子を解析し、以下のような知見を得た。 1. Spondylometaphyseal dysplasia(SMD)の原因遺伝子の同定:SMDの原因遺伝子が、type X collagen遺伝子(COL10Al)であることを発見し、世界で初めて報告した。 2. Schmid型metaphyseal dysplasiaにおけるtype X collagen遺伝子の変異:PCR-直接シーケンス法によりSchfmid型metaphyseal dysplasia患者におけるtype X collagen遺伝子の変異を検討した。2例で、過去に報告のないtype X collagenのN末端のglobular domain内の点変異を同定した。 3. 偽性軟骨無形成症患者におけるCartilage oligomeric matrix protein(COMP)の遺伝子変異:PCR-SSCP法によりCOMP遺伝子の変異をスクリーニングし、シーケンス解析により、その変異を同定した。11例の偽性軟骨無形成症患者を解析し、COMP遺伝子のexon9,10,11,13に存在する計8つの変異を同定した。内3つは既報の3塩基の欠失、5つは過去に報告のない点突然変異であった。exon 13のGAC repeatにmutationのhot spotがあることがわかった。更に偽性 軟骨無形成症の臨床的重症度とCOMP遺伝子の変異の位置に対応関係(phenotype-genotype correlation)があることを発見した。 4. 偽性軟骨無形成症に合併した11番染色体の欠失例の解析:11番染色体にmapされるcosmidクローンを用い、染色体FISH(fluolescence in situ hybridization)法によって欠失の位置を限局化した。すなわち、偽性軟骨無形成症の第2の原因遺伝子が、11番染色体の長腕q21-q22.2の約7Mbの領域に存在する可能性を示した。 5. 多発性骨端異形成症におけるCOMP遺伝子の変異の検索:PCR-直接シーケンス法によりCOMP遺伝子の変異を解析した。1例の多発性骨端異形成症患者で、COMP遺伝子のexon14に存在する、過去に報告のない点変異を同定した。
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