研究概要 |
(1) 真珠腫疫学調査を長崎県内の耳鼻咽喉科医へのアンケート調査にて行った。平成8年,9年の2年間に真珠腫新鮮例で手術を受けた長崎県民は137人/10万人(平成8年61人、9年76人)であり,人口10万人比では4.44人(平成8年3.96人,9年4.93人)となった.この発生頻度の結果は平成6、7年に宮城県で申請者が行った同様の調査による4.0人/10万人と近似している.日本の中でも風土・気候が異なる遠隔2地点の調査結果に一致をみたことから,わが国における真珠腫の年間発症率を約4人/10万人とすることができる。 (2) 真珠腫手術患者の血縁者における耳疾患の頻度の調査を行っている18家系・40名の調査で7家系10名に何らかの耳疾患を認めた.上鼓室陥凹5名,癒着性中耳炎2名,慢性中耳炎1名・術後耳2名であった。 (3) 中耳真珠腫の約30%の成因に関与していることが明らかになった耳管閉鎖不全および耳管開放症に対して、経鼓室耳管内軟骨挿入術を開発し,22例30耳に施行した。全例において耳閉感などの不快耳症状の改善をみとめた。長期観察においても開放感の16耳中11耳(73%)、閉鎖不全を伴う耳疾患15耳中14耳(93%)の有効率を得た。さらに、シリコン素材の充填材を作成した。その効果は検討中であるが、これまでに使用した症例においては、きわめて有望との印象を得ている。 (4) 迷路痕孔の手術法の基礎実験のため半規管切断実験を行った。モルモットを麻酔し人工呼吸を行った後、EP、CM、CAPを連続的に記録し三半規管を順次切断し、その後、長時間の電位の安定性を確認した。また2半規管を切断し、一方の半規管の断端に吸引を施行。吸引の量、及び、他端が乾燥しているか、滲出液で侵されているかにより、内耳障害の程度におおきな差が見られた。
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