研究概要 |
Meerwein-Ponndorf-Verley(MPV)反応を基盤とした多機能性新規不斉還元反応の開発を検討した。 1.Tandem Michael-MPV反応の開発(α,β-不飽和ケトンの不斉還元反応) 本反応はα,β-不飽和ケトンへのSH基のMichael付加と分子内MPV還元とが連結した反応である。カンファースルホン酸から導いたメルカプトアルコールとMe_2AlClから生成した不斉反応剤を用いた反応は、高収率・高立体選択的に生成物を与えた。反応機構の研究により、本反応は不斉1,7-水素転位と、動的速度論分割により立体制御していることを確認した。本生成物から不斉補助基の各種脱離反応により種々の光学活性アルコールが合成できた。本反応の天然物合成への応用にも成功した。 2.官能基交換型不斉Tandem Michel-MPV反応の開発 カンファーから導いたメルカプトアルコールとMe_2AlClから生成される不斉反応剤は、芳香族置換基を持つα,β-不飽和ケトンに対し動的速度論的制御が発現し単一のジアステレオマーを生成した。本反応生成物に第三級アミンを作用させると、2種の不斉炭素をもつ1,3-メルカプトアルコールとα,β-不飽和ケトンを与え、官能基交換型不斉反応を一般化することに成功した。 3.不斉プロトン化反応の開発 (1)α-置換α,β-不飽和エステルと上記不斉反応剤との反応では不斉プロトン化を含むMichael付加体が高立体選択的に生成した。本生成物から不斉補助基の脱離に特殊な分解反応を開発し、α-位が立体制御されたα-置換-β-メルカプトエステルの合成に成功した。また、本反応を用いてアンジオテンシン交換酵素阻害薬カプトプリルの形式不斉合成を達成した。 (2)α-置換α,β-不飽和ケトンの上記不斉プロトン化を含む不斉Tandem反応を試み、高立体選択的3連続不斉炭素の構築に成功した。本生成物から2連続不斉炭素をもつアルコールへの変換には成功したが、3連続不斉炭素をもつ化合物への変換には現在成功していない。
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