研究概要 |
細胞外マトリックス(ECM)や細胞膜に存在するグリコサミノグリカン(GAG)が細胞の増殖因子・成長因子や様々な活性化因子と選択的な親和性を有することが,相次いで明らかとなり,これまで単にECMあるいは細胞膜構成成分としか捉えられていなかったGAGの役割が脚光を浴びるに至っている. 我々は生体内GAGの研究を遂行する上で,GAGの高感度な自動分析法の必要性を痛切に感じながら様々な微量分析法を検討した.それぞれのGAGに特異的に作用する酵素によって生じた約20種類ものGAG構成オリゴ糖を迅速かつ高感度に分離定量する技術として,我々は3種類の逆相イオンペアポストカラムHPLC法の条件を確立し,これらを公表した.さらにキャピラリー電気泳動法によるプレラべル化GAG由来オリゴ糖の高感度分析法を確立した.これらの方法を駆使して臓器切片をスライドガラス上で酵素処理し,生成するオリゴ糖鎖の定量法を報告し,肝・腎の線維化と相関するCS/DS糖鎖の変動を明らかにした.これらの検討結果からさらに細胞内の極微量のGAGをいかに定量するかを目的に準備を進めている. 申請者らが見出した新しいヘパラン硫酸様グリコサミノグリカンの生理活性の一つとして,塩基性線維芽細胞増殖因子との相互作用を明らかにした.さらにこの新しいGAG鎖が,増殖因子受容体とヘパラン硫酸の相互作用を抑制する効果について,定量的に追求した.また核磁気共鳴スペクトル法による二分子間の相互作用を定量的に解析する手法も確立した.これらの結果を基に,細胞内極微量のGAGの挙動解析を追求している.
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