研究概要 |
新薬開発、病態診断等に重要な臨床分析すなわち生体内化学環境のイメージ化における電気化学分析法の可能性を最大限に活用しうる修飾電極の開発を目的とし、本研究を行ない、以下の知見を得た。 (1) HO(CH_2CH_2O)_nR(n=1〜4,R=H or CH_3)中で陽極酸化処理したGC電極の表面特性を比較検討したところ、HO(CH_2CH_2O)_3Hにより表面修飾したGC電極(Electrode 1)が、生体内化学環境の電気化学的イメージ化に最適であることを見い出した。また、Electrode 1を用いるHPLCにより、除タンパク質操作することなく尿中のアセトアミノフェンを満足すべき感度で、かつ再現性よく分析することに成功した。 (2) H_2O中でまず陽極酸化処理し、更にHO(CH_2CH_2O)_3H中で陽極酸化処理した修飾電極(Electrode 2)をElectrode lのかわりに用いることにより、尿中のアセトアミノフェンをより高感度に定量できるHPLC分析法が開発できた。また、Electrode 2を用いるHPLCが様々な生体成分の分析法として活用可能であることも明らかにし、現在、実サンプルの分析へのその適用性を更に検討している。 (3) 炭素電極以外の様々な材質の電極にも適用可能な生体適合性分子修飾電極作製法の開発を目指し、種々検討を行なった結果、m-HOC_6H_4O(CH_2CH_2O)_4CH_3から陽極酸化的に生成するポリマーにより電極表面を被膜することにより、GCだけでなく金電極表面にも生体適合性界面を構築するに成功した。 (4) HOCH_2CH_2SO_3Naを含むHO(CH_2CH_2O)_3H中での陽極酸化処理により作製したGC電極(Electrode 3)の表面には効果的に-O(CH_2CH_2O)_2CH_2CO_2Hが導入されていることを見い出した。また、Electrode 3は、その表面にアニオン性官能基を有するため、カチオン種であるカテコールアミン類に対して高度な電気化学的選択性を有することが明らかになった。 (5) Electrode 3の表面に存在するカルボキシル基を利用して、電気化学触媒能を有する4-amino-2,2,6,6-tetramethylpiperidinyl-1-oxy radical(4-amino-TEMPO)および3,4-dihydroxybenzylamine(3,4-DHBA)をGC電極表面に固定化することに成功した。4-amino-TEMPO固定化電極を用いるHPLCによりグルコースなどの糖類を非常に低い検出電位で分析できることを見い出した。また、3,4-DHBA固定化電極はMg^<2+>共存下においてのみNADHの酸化に対して触媒能を発現することも明らかにした。
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