研究概要 |
本研究で開発されたLiHレーザープラズマ標的は,電子密度が目標の10^<19>cm^<-3>に達しなかったものの,レーザー干渉測定,分光測定等の診断手法により,温度10〜20eVでほぼ球対称なガウス分布に近い電子密度分布を有し,イオンビームの標的として十分使用できることが分かった. また加速器からの直流ビームをパルス化し,マイクロチャンネルプレートを用いた時間検出器により測定する飛行時間測定システムは,低速イオンの阻止能測定に十分な測定感度と時間分解能を有することが分かった.またスペクトロメーターにおけるイオン光学的最適化設計により,荷電状態毎に分離したイオンを検出器まで100%の透過効率で輸送することが可能となった.またプラスチックシンチレータを用いて十分な検出感度と時間分解能が得られた. 測定によると^<16>O,^<28>Siイオンの阻止能は等価常温標的に比較して3〜4倍に増加していることが確認された.一方,プラズマ診断測定の結果からクーロン対数を評価したところ,実験結果はクーロン対数の増加だけでは説明できないことが分かった.これらの考察から,阻止能の測定結果を用いて入射イオンの有効電荷を計算したところ,常温標的と比較して20〜30%ほど増大していることが判明した. 荷電状態分布測定の結果,荷電数の分布は常温標的に比較して高荷電数側に大きくシフトしていることが分かった.この実験結果を受け,荷電変換のレート方程式を解き,荷電状態分布と平均荷電数を数値計算したところ,計算結果は誤差10%の範囲内で測定値と一致した. 以上の研究により,特に低速の重イオンビームに対しては,プラズマ中で阻止能に影響を与えるクーロン対数が増加することの他に,電子捕獲確率が低下するために有効電荷数が上昇し,これが阻止能増大の主な理由になっていることが明らかとなった.
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