配分額 *注記 |
11,500千円 (直接経費: 11,500千円)
1999年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1998年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1997年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
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研究概要 |
これまでのラット脳一側梗塞モデルによる実験で、神経細胞の核には他の細胞に比べて極めて高濃度にμ-カルパイン前駆体が存在し、それが虚血により早期に活性化されることを示してきた。本研究ではその実態を一層明らかにするために神経芽細胞腫GOTO細胞の培養実験により低酸素下における細胞死の解析を行い、以下の結果を得た。 1.酸素分圧1/5の低酸素条件下でμ-カルパイン前駆体抗体による核の染色性は経時的に減少し、Trypan blue exclusion testによる細胞死もそれに平行的に進行することが示された。 2.ARGUS-50による低酸素実験で細胞内カルシウム濃度は2-3分後から急速に上昇し、5分後には最高値に達した。この値は細胞質の濃度より核における濃度の方が常に先行して上昇し最終濃度において10〜20%高いことが示された。 3.低酸素下の細胞死は(1)カルパインインヒビターI, II, III、(2)カルシウム拮抗剤によって抑制されるとともに、(3)カスパーゼインヒビターICE1によつても軽度に抑制されることが示された。そして(1)・(2)・(3)の併用で極めて高い相乗的抑制効果がみられた。 4.アポトーシス/ネクローシスの判別法であるacridine orange/ethidium bromide法により、ネクローシスは6時間値62%,12時間値65%,24時間値68%であったのに対し、アポトーシスではそれぞれ5〜8%,7〜12%,7.6〜15%であった。 5.μ-カルパイン前駆体の活性化による核内蛋白質の分解を検索するために、数種類の転写因子について、in vitroでのμ-カルパインによる切断を試みた。その結果NFκBp65,Pit-1,Oct-1,GHF4,CREB等が限定分解をうけることが示された。 これらの結果から脳神経細胞が虚血/低酸素に弱い原因の一つはとりわけ神経細胞の核にμ-カルパイン前駆体が高濃度に存在し、それが低酸素下に活性化して核内蛋白質を分解すること、細胞死の大半はネクローシスであり、それにアポトーシスによる細胞死が加わること、及びカルパインインヒビターとカルシウム拮抗剤の併用が虚血性神経細胞死の抑制に効果的で今後治療対策に有用であることが示された。
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