研究課題
基盤研究(B)
本研究では、高分子系の超分子集合体として近年注目されているポリロタキサンのバイオマテリアルとしての基礎研究を世界に先駆けて実施した。多数のα-シクロデキストリン(α-CD)の空洞部内を貫通したポリエチレングリコールの両末端に嵩高い置換基(フェニルアラニン)をペプチド結合を介して導入した。このポリロタキサンは生理環境下で、その超分子構造に裏付けられた異方性のある会合体を形成しており、それによって酵素分解性が会合数に依存せず進行することが明らかとなった。これまでの酵素分解性高分子の分解性が会合数に依存していたことから、超分子構造を有する生体内分解性ポリロタキサン独自の特徴を明らかにすることが出来た。この特徴をもとに、モデル薬物であるテオフィリンをポリロタキサンに導入し、酵素分解(超分子構造の解離)に伴う薬物放出を実現した。また、生体内埋植材料としての展開を目指して、ヒドロゲルの設計も行った。ここでは、もう一つの水溶性高分子をポリロタキサン中のα-CD側鎖水酸基で架橋しており、ポリロタキサン末端エステル基の加水分解をもとにα-CDが脱離することによって架橋構造が消失するように設計した。次に、ポリロタキサン・ヒドロゲルの分解・消失挙動の解析から、ポリロタキサン・ヒドロゲルの分解・消失性は含水率に依存せず、むしろ水溶性高分子の高比率において低下していた。このことは、水溶性高分子をα-CDに導入したことによりα-CD間の水素結合性が低下し、結果としてエステル基のα-CDによる包接が生起したものと推測される。以上の研究により、これまで合成以外では固体構造がわずかに研究されていたに過ぎないポリロタキサンを積極的に利用することにより、全く新しい機能を有する生体内分解性材料設計の指針を提唱することが出来た。
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