研究概要 |
密接な医療機関連携を確立するために情報通信技術を利用した医療情報システムを開発した.まず,平成9年度には,医療機関に設置された端末から患者IDを入力するだけで,患者が受診したことのあるすべての医療機関から患者の診療情報を収集して適切な形で医師に提示するID Lookup Systemを開発した.これは,医療機関連携の礎となる基盤システムである.しかしながら,このシステムには診療情報の標準化の問題,ユニークな患者IDの付番の方法,患者の診療情報の帰属の問題,社会的コンセンサスの問題等,解決すべき問題が多数残されているため提案の域にとどまった.ついで,同年度に,地域の診療所と中核病院の間で患者紹介状及びそれに対するコンサルテーションを,暗号化技術とインターネット技術を応用して交換する病診連携支援システムを開発した. このシステムを使用した模擬実験では一定の成果を収めることができたが,開発言語にJavaを採用したため操作性,特にユーザインターフェースに難があったこと,そして基本的にポイント・ツー・ポイントでの利用を念頭において開発したため,病院管理上の機能を備えていないという問題点があった.そこで,これらの問題点を解決すべく平成10年度に新たにシステムを再構築した.具体的には開発言語にMicrosoft Visual Basic V5.0を採用してユーザインターフェースを強化し,患者紹介受入医療機関に地域医療連携係などの窓口となる部門を設置し,連携先の診療所から送られてきた紹介状をいったんそこで受信した後に院内の然るべき担当医に転送するという運用を行うようにした.このシステムを使って5つの医療機関の協力の下に運用実験を開始し,現在では実際の症例も扱っており,現場の医師から本システムの有効性について高い評価を受けた.次年度以降もさらに実験協力医療機関の数を増やし,本格的な運用に向けて着々と準備を進めていく予定である.
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