研究概要 |
当研究の目的は,小学校中学年期・高学年期にある学習障害児の内発的動機づけを支援する教育的手法の在り方を解明することであった。 人間には三つの非常に主要な心理的欲求(すなわち,交流感,自己決定感,有能感)がある。研究組織者は,内外の動機づけ分野の専門家によって蓄積されてきた内発的動機づけに関する研究論文等を精査することをとおして開発した「内発的動機づけ支援手立て評定尺度(改訂版)」を活用することによって,これら欲求のうちの第三のもの(有能感)にも増して第一と第二のもの(交流感と自己決定感)が非常に大切であるということを見出した。さらにその上,下記のような支援手立てが重要であることを確認することができた。 まず第一に,学習障害児の交流感を充足させる手立てとしては,「容認的に応対する」ことが重要である。子どもは他者からの温情と拘わり合いを必要としている。子どもを全く独りで置き去りにすることは交流感の支援ではなく,それは怠慢である。交流感の支援には,教師や親の側からの拘わり合いが必夢である。第二に,学習障害児の自己決定感を充足させる手立てとしては,余りにも容易であったり困難であったりしない「最適な課題を選定する」ことが重要である。子どもは自分の現在の能力水準をやや越えているような活動に自然に引きつけられるものである。第三に,それぞれの手立ては単独ではその効果を十分に発揮することはできない。「それぞれの手立てを連結・連動させる」ことが重要である。たいていの教育的成果というものは,交流感の支援が自己決定感や有能感の支援と関連づけて行われる時に,発生するものである。
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