研究概要 |
本研究では,1.軟X線用の光学超薄膜偏光素子の性能を向上し,軟X線領域の偏光計測・制御の実用化をめざす.また,これと平行して,2.光学超薄膜の物質対と周期膜厚を最適化し,適用波長域を広げる.さらに,3.開発した高性能偏光素子を使用して軟X線エリプソメトリーの精度を上げて,これを新しい表面分析法として発展させることを目的として研究をおこなった.その結果,各項目で次の成果を上げることができた. 1. では,波長13nmでの透過型の1/4波長板と1/2波長板を,Mo/Siの基板無しのフリースタンディグ多層膜で実現できた.偏光特性は,放射光を光源として反射型多層膜直線偏光子を用いた回転検光子エリプソメトリーで評価した. 2. では,従来は高々数%の反射率に留まっていた水の窓領域の多層膜反射鏡の高反射率化に取り組んだ.物質対にはScに対して,Cr,Ni,Si,C,Alを選び,200層試料で試作して周期性の最もよいSc/Crの組み合わせについてさらに研究を進めた.最終的にはBCR方式のスパッタリング装置の成膜速度を安定化して,500層を成膜時間で制御し,成膜時の基板温度を最適化した70℃で成膜して,波長3.1nmで反射率15%を達成した. 3. では,消光率0.001の偏光子で,40nmの厚さのMb薄膜を試料にして観測された共鳴条件を,理論的に解析し,膜厚で0.01nm,屈折率で0.001,消衰係数で0.000lの感度が得られることを明らかにした.
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