研究概要 |
環境質を制御し,かつ動的荷重を負荷した条件下において原子間力顕微鏡観察が行えるように,真空環境や湿潤ガス環境下で動作可能な環境質対応型原子間力顕微鏡と微小な荷重を精度良く負荷することの可能な環境対応型動的負荷装置,および環境槽よりなる環境質制御ナノ欠陥追跡・解析装置を試作した。本試作装置に採用した原子間力顕微鏡は,1)試料の上方に探針駆動のためのピエゾ素子スキャナ,探針,検出系の全てが位置している構造,2)ピエゾ素子スキャナ,検出系(半導体レーザ素子やレーザ光検出器)が環境槽と分離している構造,を有している。このような構造を採用することにより,湿潤ガス環境中の原子間力顕微鏡観察においてもスキャナや半導体レーザ素子に湿潤ガスが曝されることなく安定した原子間力顕微鏡観察を可能とした。また,マイクロエレメントや複合材料強化用高強度・高弾性繊維に対して動的な荷重を精度良く負荷可能なように電磁力方式による環境対応型動的負荷装置を開発した。本研究においては,本試作装置が所望の性能を有していることを確認するとともに,試作装置と微小材料機械的特性評価試験装置を用いて,セラミックス系単繊維の引張荷重保持下および変動応力下の試験を実施するとともに,原子間力顕微鏡を用いてナノメータオーダで単繊維表面の損傷を可視化した。その結果,空中の変動応力下および水環境中の一定持続荷重下ともに応力繰返し数あるいは時間の経過とともに,nmオーダの表面あらさが増大することを明らかにするとともに,そのあらさの増大速度を求め,試作装置の有用性を確認した。
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