研究概要 |
超高速切削における工具損耗機構を究明しこれを高精度に監視するためには,切削現象に伴う3軸方向の切削分力を高い時間分解能で計測するとともに,工具損耗現象とその支配因子との関連についても基礎的に理解することが必要である.そこで,本研究ではまず,コーティングを施した各種工具の損耗現象の究明を目的として,高速回転時のエンドミル工具の1切れ刃当たりの3軸方向の切削分力を高い時間分解能と感度で計測する手法を開発した.具体的には,主軸回転数(〜40,000rpm)と工具切れ刃数(〜6枚)を考慮して,応答周波数が数10kHz〜100kHzで高感度の3軸衝撃荷重測定センサ(インパクトセンサ)を利用した切削動力計と計測システムを試作・構築し性能評価を行った.つぎに,試作した切削力モニタリングシステムを用いて,切削条件と工具損耗との関連を切削抵抗から定量的に求めるとともに,工具損耗の支配因子を特定し加工条件にフィードバックできるアルゴリズムを提言した. 本研究は,高速度で互いに干渉する工具-被削材間の高応力場を高い時間分解能で計測する新しいシステムを確立し,これを応用して高速切削時の工具摩耗のメカニズムの究明とモニタリングへの適用を可能にしたものであり,当該分野における工業的な波及効果は大きい.また,測定された切削力に関する知見は,従来の切削実験の結果や解析結果とも比較し得るものであり,切削メカニズムや加工表面性状を議論するうえでも極めて重要な情報を与えてくれるものと期待される.
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