研究概要 |
はじめに:本研究は気中放電加工による超高精度微細加工システムの開発が目的である.そのためには加工速度が遅い点と,パイプ電極を使用しなければならないため数ミクロンの微細加工が困難であるという気中加工の問題点を解決する必要がある. 平成9年度(加工速度の向上):気中加工の加工速度が遅い理由は,液中加工に比べて加工ギャップが狭く,一般的な液中放電加工機の主軸の低い周波数応答性では,気中加工の狭い加工ギャップに追随できず短絡が多発するためと考えられた.そこで,圧電素子を用いた高応答性のサーボ送り機構を従来の加工機主軸に付加し,主軸の周波数応答性の向上を図るとともに,高電圧重畳により加工ギャップを広げて加工を行った.その結果,気中加工の短絡率は液中加工と同程度にまで減少し加工速度の著しい向上が実現した. 平成10年度(気中微細放電加工):極間外から極間に気体流を供給して中実軸の加工を行う気中WEDGによる微細工具電極の作成を試み,最小直径5μmの軸加工が実現できた.さらに高アスペクト比の軸加工を行ったところ,気中WEDGで作成した軸の方が残留応力が少ないため反りが少ないことが明らかとなった.また,微細溝加工の結果から液中加工に比べて工具電極消耗が極めて少ないことが分かった.しかし,短絡頻度が液中加工に比べて高く,しかも,放電1回当たりの加工量が液中加工に比べて少ないため加工速度が遅い.今回使用した微細放電加工機の短絡回避動作の応答性が低いため,加工ギャップが狭く短絡の発生頻度の高い気中加工の放電頻度は毎秒数回〜数十回程度と極めて少ない,そこで,短絡検出感度を鈍化させ,多少の短絡に関わらず加工を持続させ放電頻度の増加を図ることで加工速度の向上が実現した.また,極間への気体流の供給が不十分なことが放電1回当たりの加工量を少なくする原因と考えられた.そこで,溝形状加工において回転電極の断面形状を円形状から半円形状に変更し,極間に効率よく気体流を供給して加工を行ったところ加工速度の向上が図れた.
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