研究概要 |
試作した往復動型摩擦試験機を用いて,今後自動車用ディーゼル燃料油としての用途増加が期待される分解軽油に着目し,それに深度脱硫を行った場合に考えられる潤滑上の問題点を検討した.特に分解軽油中に多く含まれる芳香族留分によって耐摩耗添加剤の効果に差異が生じるかを検討した.モデル軽油としてヘキサカデンを用い,環状飽和炭化水素化合物であるデカリン,芳香族留分のモデルとしてブチルベンゼン,メチルナフタレン,テトラリンを用い,適宜混合してその影響を検討した.また,モデル耐摩耗添加剤としてステアリン酸とカテコールを用い,さらに,実際に市場で使用されている軽油用摩耗低減剤を使用してその結果を検討した.モデル添加剤としての,ステアリン酸,カテコールの場合,ともに低濃度でその効果を発揮するが,ステアリン酸はある濃度域で急激に効果を発揮するのに比べ,カテコールは濃度増加に連れ徐々にその効果を発揮することが明らかとなった.また,芳香族分存在下ではカテコールはより低濃度でその効果を発揮するのに対し,ステアリン酸は芳香族成分の有無によって効果に影響は見られなかった.一方市販添加剤を用いた研究では,芳香族含有モデル軽油の場合,添加剤は10〜20ppm効き始め,ヘキサデカンおよびヘキサデカン+デカリンの飽和炭化水素のみのモデル軽油より低濃度から効果を発揮することが明らかとなった.また,わずかな酸化劣化が及ぼす影響を見るため試料油に紫外光を照射して過酸化物を生成させた試料油も用いた.酸化によって生じた過酸化物が,添加剤の摩擦面への吸着を妨げるためか,劣化油では添加剤の効果が劣ることが明らかとなった.
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