研究概要 |
電力の安定供給は,現在社会の活動を支える基盤をなすものであり,その供給信頼度の安定維持のために電力系統を構成する各部門において数々の方策が講じられてきている。しかし,今日においても新聞報道にも見られるように自然災害あるいは人災により広範囲の停電が発生し,その復旧に多大な時間を有している。このような状況に鑑み,本研究では系統運用者の事故復旧を支援して迅速に処理できるような実用的なシステムの構築方法について以下の項目を研究した。 (1)実用上の設計目標値である30秒程度で最適な復旧目標系統を効率的に求める方法についての検討を行う。(2)実系統モデルを参考にしてCRT画面上で各種の事故条件を設定して提案方式で評価できるシステムを構築する。 まず,上記(1)の項目に対しては,数理計画法に基づいて3つの方法を提案した。すなわち,配電系統事故復旧問題に関して数理計画法の一種である混合整数計画法を用いた復旧目標系統の決定法とその高速化方法,線形計画法と混合整数計画の併用による復旧目標系統を決定する方法,そして,"復旧操作コスト"に系統運用者の戦略を導入する方法を提案した。最後の方法によると,従来実用規模の問題には適用が困難であるとされている数理計算法を適用しても,復旧目標系統作成の目標時間30秒をほぼクリアーすることが可能となった。以上の結果より,数理計画法を用いた事故復旧操作の実用化の可能性が得られたと考えられる。次に,(2)の項目に関しては,GUIとしてOSF/Motifを用いた事故復旧システムを開発した。本システムは,「電力系統モデル作成処理」,「画面表示処理」,「停電判定処理」,「系統解析処理」,「復旧目標系統作成処理」,「復旧手順作成処理」の6つの機能からなる大規模なシステムとなった。
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