研究概要 |
本研究は,赤外線イメージングシステムを応用した,多重分光型3次元熱画像の作成手法,及び,これを用いた,屋外の人体に対する長波長放射場等の熱環境を評価するシステムを開発することが目的である。以下,本研究の実績概要を述べる。 1. 計測点より全球を視野に捕らえた多重分光型熱画像(多重分光型全球熱画像)を収録する装置を開発した。目的に応じた,平面投影による各種表示方法を提示するとともに,選択放射体であり,比較的大きな形態係数を持つことの多い天空に対し,外気温の測定値を併用した放射温度の補正方法を提案し,その有効性を検証した。 2. 開発した計測システムを応用し,人間が滞在活動を行う屋外空間のひとつである街路空間における,夏季の長波長放射場の分析を行った。実測対象には,長波長放射場の多様な性状を把握するため,天空側の設えや周辺地物の構成等が異なる複数の空間が選定された。周囲からの長波長放射を映像として表現できる新たな計測システムの特長を活かし,各空間における長波長放射場の特徴を明らかにした。 3. 全球熱画像と3次元幾何情報を連係させ,3次元熱画像を作成するシステムを開発した。まず,建物等の地物の3次元幾何情報の構築方法について検討し,既存のソフトウェア環境で不足する機能を追加するとともに,遺伝的アルゴリズム等を用いた独自の手法によって,3次元熱画像の作成に関わる実用上の問題点を解決した。 4. 本研究で開発した手法を用い,夏季の建物による囲み空間を対象に,長波長放射場の空間分布特性について実測調査と分析を行った。同じ空間内であっても,特徴の異なる複数の長波長放射場が形成されていることを示すなど,本研究で開発した計測システムの有効性を確認した。
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