研究概要 |
水産生物の加工時に生じる赤血球膜物質と溶血液の工学的利用を目指して,イワシなどの魚血液水の悪臭ガス分離性を評価し,血球膜に各種機能分子を組み込んで新たな分離膜を作り出すことを目的に研究し,次のような結果が得られた。 1.マイワシの血液水の悪臭ガス吸収は速やかであった。初期段階は一次反応で近似でき,トリメチルアミン(TMA)では速度定数42min^<-1>(25℃),最適温度25〜28℃を示した。 2.マイワシ血液水にTMA共存濃度の影響を吸収スペクトルで解析したところ,TMAの濃度増加とともに強いヘム間相互作用が働いてガスと反応することがわかった。また,酸化状態を調整することでガスの吸・脱着を制御できることも明らかになった。 3.穴あき血球膜(ホワイトゴースト膜)の大きさ,形を電子顕微鏡で確認しながらヒツジ血液から最適なホワイトゴースト作成方法を確立し,マイワシ血液にも適用できた。 4.ホワイトゴーストの封入および取出し特性を各種物質について調べたところ,アルコール,アミノ酸,水溶性ポルフィリン類などが緩衝液の濃度制御によって封入および取出しが可能となった。ホワイトゴースト膜が新たなマイクロカプセルや"超ミクロ容器"として物質の分離,保存,反応などに応用できることを示すものである。 5.魚血液から抽出されるヘミン錯体を人工高分子系に集積するため,ポリビニルアルコールにヘミン錯体の側鎖をエステル化反応でつなぐことを試み,部分的に固定化させたフィルムを作成することができた。
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