研究概要 |
人工細胞壁を装着した微生物および植物プロトプラストによる有用物質生産システムの開発研究を行い,下記の(1)〜(4)の成果を得た. (1)人工細胞壁として利用可能なアルギン酸のエリシター機能の発見 人工細胞壁として利用可能なアルギン酸ゲルに注目し種々検討した結果,アルギン酸がエリシター物質であり,植物の有用物質生産を促進することを見い出した.アルギン酸の作用メカニズムの基礎的解析を行い,アルギン酸の認識部位が細胞膜上にあることを推定し,細胞壁を除去したプロトプラストではアルギン酸の感度が高くエリシター効果が著しく増大すること,アルギン酸のエリシター効果はH_2O_2やCa^<2+>を同時に作用させると相乗的に増大することを見い出した. (2)簡便な人工細胞壁装着法の開発 細胞をアルギン酸ゲルで固定化した後,細胞壁溶解酵素を作用させ、ゲル内でプロトプラスト化反応を行う,微生物および植物で使用可能な,簡便で迅速な人工細胞壁装着法を開発した. (3)人工細胞壁を装着した植物プロトプラストによる有用物質生産システムの開発 人工細胞壁としてエリシター機能を有するアルギン酸ゲルをニチニチソウプロトプラストに装着して培養した結果,Indole alkaloidsを細胞の数十倍の高速度で生産することに成功した.また,人工細胞壁としてアルギン酸ゲルを装着したワサビプロトプラストにH_2O_2を添加し培養するシステムを開発した結果,エリシター効果が相乗的に増大し,細胞の数十倍の高速度でのchitinase生産に成功した。 (4)人工細胞壁を装着した微生物プロトプラストによる有用物質生産システムの開発 Invertaseの工業生産用の酵母細胞からプロトプラストを調製し,人工細胞壁として物質移動能に優れたアルギン酸ゲルを装着し,カラム型リアクターで培養した結果,通常の細胞では細胞内に蓄積されるInvertaseを,細胞外に高速度生産させることに成功した。
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