研究概要 |
ビスマス酸化物を主成分とするガラスは光学的に興味深い特性を示す。本研究はこれら物性の制御を行うとともにビスマスイオンの酸素配位数,酸素多面体の結合様式,酸化物イオンの分極性などガラスの構造・電子状態と物性との相関を明らかにすることを目的としている。具体的な成果は以下の通りである。 1. ビスマスを主成分とするガラスは,顕著なサーモクロミズムが観察される。Ga_2O_3との2成分系でのその温度係数は1.1×10^<-3>eV/Kであり,半導体の温度係数より大きかった。これはこのガラスが大きな電子・フォノン相互作用を持っているのでバンドギャップの温度依存性が大きくなるためである. 2. カドミウムまたは亜鉛イオンを含むビスマス酸化物ガラスは,顕著なフォトクロミズムを示した。これはこのガラスの酸化物イオンの電子供与性が大きいため酸素にはホールが,カドミウムイオンには電子センターができることによる。 3. Bi_2O_3-CdO-Al_2O_3系ガラスは光導電性を示し,光照射前後の電流変化は100倍にも達する。発現のメカニズムとして酸化物イオンの電子の非局在性が大きく関与していることを明らかにした。また,光照射停止後も暗電流は長時間保持した。光メモリ材料などへの応用の可能性が示唆された。 4. Bi-O結合は弱いのでガラスを高温で溶融すると欠陥が生成し易いことを利用して,Bi_2O_3-CdO-Al_2O_3系ガラスではβ-Bi_2O_3結晶類似の構造を持つ透明なガラスセラミックスを作製することができた。また,熱処理温度・雰囲気および時間を制御することにより,多彩な色調を持つ熱可逆的透明ガラスセラミックスを作ることができ熱センサーとしての可能性が示唆された。
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