研究概要 |
ジアルキルジメチルアンモニウムブロミド(DADMAB)が形成する合成ベシクルを用いてナイロン6の分散染色を行った。分散染料として1,4-ジアミノアントラキノン(1,4-DAA)を、比較のために1,4-DAAを通常の分散剤で分散化した市販染料であるMiketon Fast Red Violet Rを用いた。ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDDMAB)を用いた場合の染色速度および平衡染着量は、Miketon Fast Red Violet R系よりも著しく増大する。またDDDMABを用いると、染色速度、飽和染着量は50、70、90℃の各温度においてほぼ等しくなり、50℃において90℃と同等の染色性が得られ、低温染色が可能になる。つぎに1,4-DAA/DADMAB系でポリステルの染色を行った。その結果、ナイロン6の場合と同様に、110℃でも130℃とほぼ同程度の染色性が得られることが分かった。また種々の化学構造の分散染料についてベシクル形成と染色性について検討したが、染料の化学構造がベシクルへの内包に影響し、さらに染色性にも影響することが分かってきた。さらに、アニオン性ヘッドグループをもつジヘキサデシルホスフェートのベシクル系についても検討したが、カチオン性ヘッドグループもDADMABと同じような結果が得られた。1,4-DAA/DADMAB系でジアセテートを染色した結果、染色温度が60、70、80℃に変化しても飽和染着量はほとんど変化せず、また染色速度も大きくなり、ベシクルを用いるとジアセテートを60℃の低温で染色できる。DDDMABを用いてナイロン6、ポリエステル布を低温でベシクル染色し、通常の分散染色布と色相および各種堅ろう度を比較したが、各種堅ろう度はほとんど変わらないかむしろベシクル染色の方が良好であり、色純度も増大する傾向を示した。光学顕微鏡で観察したところ、ベシクルを用いた低温染色でも染料は繊維内部まで十分に拡散し、リング染色になっていないことが確認された。このような結果は、ベシクル染色が十分実用染色に使える可能性を示唆している。
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