研究概要 |
極超音速航空機や宇宙往復輸送機の実現へ向けて,空力加熱による過酷な熱負荷の環境に耐え得る軽量な耐熱構造システムが求められており,高温環境下での構造の変形やひずみの測定方法の確立が必須の課題となっている.本研究では,この問題の解決策として期待される電子式レーザースペックル干渉法による高温下での耐熱構造材料の熱変形計測システムの開発を最終的な目標とした.ここで提案したひずみ計測の基礎であるスペックル干渉法では,一般にS/N比が悪い干渉しまの画像データを処理して必要な変形やひずみおよびそれらの分布に関する情報を得なければならない.本手法ではコンピュータを用いた演算処理により実施するため,カメラを経由して離散化した干渉しまのデータに基づいて,任意点での変位量およびひずみを定量的に求めるためのアルゴリズムについて検討を行った.従来から用いられる局所的なしま間隔に基づいた単純な計算法に加えて,測定点近傍の円形領域内の離散点の情報を考慮した計算法,さらに影響領域を離散点の疎密に応じて楕円形にとった改良型の計算法を用いて,平板の面内ひずみの値を求め,ひずみゲージによる測定結果と比較検討することなどで,本研究で提案した演算手法の有効性について検討した.適当な長径/短径比の楕円領域を用いると安定した結果を得ることができることを示した.炭素繊維複合材料試験片を用いた種々の温度における線膨張係数の測定に本測定法を適用し,温度上昇に伴う膨張の測定と線膨張率の見積もりを行った.供試体表面に特別の処理を施す必要がなく,また完全に非接触の測定法である点で,本測定方法は高温環境下での熱変形・ひずみ計測に適した手法であると考えられる.ただし非常に高い温度環境下では,状況によっては材料の酸化や周囲大気のゆらぎに対する対策が必要となる.
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