研究概要 |
最近,インテリジェント構造あるいはスマート構造と呼ばれる知能化構造への関心が高まっている。本研究では知能化構造への接近の一つである犠牲試験片取り付けによる構造モニタリングについて研究を行ったものである。犠牲試験片取付け法とは,構造部材の応力が拡大伝達されるように工夫した小型試験片を,構造物に設置して一定期間モニタリングを行い,犠牲試験片に生じた疲労損傷状態から,構造物の疲労損傷時期や応力状態を推定する方法である。 本研究では,構造物に接着で取付ける方式の2種類の亀裂伝播型犠牲試験片を開発した。一つは,構造物の疲労損傷予知を目的とした標準型の犠牲試験片である。もう一つは,構造物の長期応力度推定を目的とした高感度犠牲試験片である。応力推定は歪ゲージのように応力履歴そのものをモニタリングするのではなく,応力の負荷過程を犠牲試験片に疲労損傷として蓄積し,犠牲試験片の疲労損傷状況をモニタリングして,構造物の長期応力度を推定するものである。2種類の犠牲試験片を試作し,平滑材,切欠き材および溶接継手に設置して,一定応力振幅および指数分布のランダム荷重下で疲労試験を行い,開発した犠牲試験片の性能を証明するとともに,犠牲試験片のモニタリング結果から,構造物の疲労寿命や長期応力度を推定する手法を明らかにした。また,犠牲試験片の実船実験も行った。研究成果は学会論文集に報告するとともに,2件の国有特許申請も行った。 1) 構造物の疲労損傷予知モニタリングのための犠牲試験片,特許番号2799431号. 2) 構造物の長期応力度モニタリングのための犠牲試験片およびその使用方法,出願番号358725号.
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