研究概要 |
ラドン濃度の連続測定を可能にするために,イオニゼーションチェンバー法に注目し,AlphaGUARD(Genitron 社)を測定に用いた。この機器によると,ラドン同位体の中で半減期が3.82日と最も長い^<222>Rnの濃度(単位Bq/m^3),気温,気圧,湿度,データの質などが10分間隔で得られる。測定の対象としては,断層上に位置し,火山性ガスの噴気も盛んである阿蘇山火口西側の温泉地区を選んだ。ここに深さ1mの測定孔を設け,電動ポンプにより0.5 l/minの割合でガスの吸入を行った。ガスは高温・多湿であるために,測定器への移動の過程で冷やされ,水滴が生ずる。これが測定器内に入るとシステムが不安定になり,正確なデータが得られない。この対策として除湿器をポンプと測定器の間に設けた。また,換気と照明の装置が付いた小屋内にAlphaGUARDを入れ,機器周辺の温度や湿度が大きく変化することのないように留意した。 1998年8月11日からの24,419個の測定データを解析に用いたところ,ラドン濃度と気温,気圧,湿度との相関性は低いが,ラドン濃度の変化は大きく,一日に0.4×10^5 Bq/m^3程度の変動幅をもつことがわかった。しかし一日当たりの平均濃度に注目すると,それは滑らかな曲線で近似できるような時間的変動を示す。すなわちトレンド成分が存在する。ラドン濃度の変動に対して,最大エントロピー法によりスペクトル解析を行ったところ,24時間の顕著な周期が含まれ,これよりも弱いが12時間の周期性もあることがわかった。これらは地球潮汐の周期性に対応する。さらに,火山性地震の振幅の積算値とラドン濃度の時間的変動とを比較した結果,地震が多く,振幅の積算値が急増する期間ではラドン濃度の増加も概ね大きいことがわかった。すなわち,地震に伴う温度・圧力の擾乱の影響がラドン濃度に現れ,これに地球潮汐の影響が重なり合っていることが明らかになった。
|