研究概要 |
植物体の表面電位を簡便に測定することを目的として,高インピーダンス入力を低インピーダンス出力へ変換するIC(LF412N)を組み込んだ測定装置を試作し,圃場あるいはポット(土耕・水耕)栽培したバレイショ・インゲンマメ・イネを対象に,茎(葉鞘)表面電位を測定した.本装置での銀線を用いたセンサーによる測定は,塩化カリ比較電極を活用した装置との比較から,ほぼ正確に表面電位を測定していることが明らかとなった.ただし,当初の開発機器では,電極回路がオープンなときには過負荷となり破壊されることがあったため,ターミナル部分をアースで囲う回路パターン基板を導入し,またノイズ低減のため電源部と入力部との間にはセラミックコンデンサーを組み込み,さらにIC取り付けをソケット化するなど,現場における測定に対応して種々の改良を実施した。なお,電位の基準となるアースを比較電極とした場合と銅管にした場合とを比較し,両アース間には20-30mVオーダでの差異が存在するが,その差異は日変化せず安定していることを確認した.このため,アースの種類は植物体表面電位の絶対値には影響するが,日変化のパターンには影響しないものと考えられた. 多くの測定において,植物体の表面電位は,一般に日の出とともに減少し,日中は低い値を維持し,夜間に上昇する日変化(日較差:約100mV)を示した.しかし,顕著な個体間差が認められ,測定部位による変動が大きいことを明らかにしたが,日変化の原因としていずれの環境要因が主要因であるかは不明であった.水耕栽培の場合に,一般に培養液pHの上昇で表面電位は増加し,pH低下では減少した.また,木質部(導管内)の電位は表面電位と比較すると極めて小さく,部位による差異も小さかった.従って,表面電位は木質部と茎表面の電位差であると推察できるが,さらに検討を要する.
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