研究概要 |
PCB/biphenyl分解菌 Pseudomonas sp.KKS102のbphオペロンの制御系を解析し,本オペロンの転写レベルでの発現がビフェニルの添加により誘導されること,近傍に存在する転写因子と相同性のある遺伝子が本オペロンの制御には関与していないこと,直接の誘導物質はビフェニルではなくメタ開裂物質であること等を明らかにし,制御に関与するシスエレメントの同定にまで至った。 しかし,本オペロンの制御系は予想以上に複雑であり,基礎学問的には興味深い知見がいくつか得られたものの,転写因子の同定および,その改変による高効率分解菌あるいはそれを利用した高効率PCB分解バイオリアクターの構築にまでは至らなかった。 今後,KKS102のbphオペロンの制御系について更に解析を進めていくことは必要であるが,現在までに得られた知見だけを利用しても,制御系の改変による高効率PCB分解の育種は可能であると考えられる。すなわち,シスエレメントの改変である。相同組換えを利用した制御に関与する領域の組換え,破壊などは現実的に可能である。KKS102のbphオペロンでその効果を確認し,他の分解菌に応用していくことが期待される。 以上,残念ながら実際に有効な高効率分解菌を遺伝子組換えにより育種し,その効果を検討する段階には至らなかったが,本研究を通じてKKS102のbphオペロンが既知の芳香族代謝オペロンの制御系とは異なる複雑な発現制御を受けていることが明らかになると共に,制御系の改変による高効率PCB分解菌創製の可能性を示すことが出来たと考えている。
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