研究分担者 |
宮野 隆 神戸大学, 農学部, 助教授 (80200195)
三宅 正史 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60093316)
河南 保幸 神戸大学, 農学部, 教授 (60031192)
冨永 敬一郎 兵庫県中央農業技術センター, 主任研究員
原山 洋 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (30281140)
富永 敬一郎 兵庫県中央農業技術センター, 主任研究員
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研究概要 |
本研究は,ブタ卵巣内に存在する多数の未発育卵母細胞を体外培養により発育させ,成熟卵母細胞として有効に利用する技術を開発する目的で行われた。屠体または生体から得たブタ卵巣を用い,それより採取した卵胞をコラーゲンゲルに包埋し,ウシ胎児血清,FSH,エストラジオールを含むウエイマス培地を基本培地として発育培養を行った。ついで,卵胞から卵母細胞-卵丘細胞複合体を切り出し,成熟培養と体外受精に供した。得られた主な結果は,次の通りである。 直径75μm以下の卵母細胞を体外で発育させるべく,発育培地の組成の改変をいくつか試みたが,いずれの培地においても有意な効果を得るにはいたらなかった。卵母細胞のサイズと発育・成熟・受精能力の関係については,受精卵子を得るための最小サイズは,本研究の発育培養条件を用いる限り,90μm前後であると推定された。また,卵母細胞の体外発育においては卵母細胞と顆粒膜細胞との相互作用が重要な働きをすることも明らかにされた。卵胞腔形成については,初期胞状卵胞から切り取った卵母細胞-卵丘細胞-顆粒膜細胞複合体であっても,コラーゲンゲルに包埋してFSHの存在下で培養すれば,再構築されること,その間に顆粒膜細胞内のcAMP含量が増加することや,培地にdbcAMPを加えても卵胞腔形成が誘起されるが,エストラジオール-17 βは無効であることなどを明らかにし,FSHの刺激によって顆粒膜細胞内で合成されたcAMPが顆粒膜細胞の増殖,形態変化,さらには卵胞液の分泌を促し,卵胞腔が形成されると結論した。さらに,卵母細胞の減数分裂再開過程においてcdc2キナーゼとMAPキナーゼの活性化が起こることや,cdc2キナーゼあるいはカゼインキナーゼを阻害すると,減数分裂の再開が起こらないことなどを明確にした。MPF活性の阻害因子であるweelキナーゼ活性は,卵母細胞が最大サイズになると急激に上昇するが,第二減数分裂中期で再び低下する。また,減数分裂過程におけるγ-tubulin,nuclear mitotic aparatus protein(NuMA)の局在,受精の過程でサイクリンB1の分解がMAPキナーゼの脱リン酸化に先立って起こることなど,興味ある基礎的知見が得られた。これらは,卵母細胞の発育-成熟培養系の開発に大きく寄与する貴重な資料と考えられる。
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