研究分担者 |
西村 元延 大阪大学, 医学部, 助手 (90291442)
松田 暉 大阪大学, 医学部, 教授 (00028614)
張 釖嶂 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
平田 展章 大阪大学, 医学部, 助手 (70283752)
鍵崎 康治 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
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研究概要 |
1、 重症弁膜症症例における開心術術後の高ビリルビン血症発生、長期遷延を予測するため、術前の肝細胞障害の指標としてAST,ALT、肝類洞内皮細胞障害の指標として血清ヒアルロン酸(HA)、肝細胞再生の指標としてHepatocyte Growth Factor(HGF)、肝機能の指標として血清総ビリルビン値(Bil),コリンエステラーゼ(ChE)、炎症反応の指標としてCRP,IL-6,IL-8を測定し、これらの因子と術後のBilおよび術後高ビリルビン血症経過日数の関連性について検討した。その結果、術後1週間までの最高Bil値と術前Bil、ChE,HA,IL-6は有意相関を認め、これらの因子を用いて多変量回帰分析を施行したところ、IL-6が最も強い相関を示した。一方、術後Bilが1.4mg/dl以上で遷延した日数と有意相関を認めた術前因子もやはり術前Bil,ChE,HA,IL-6であり、これらの因子に対して多変量回帰分析を施行したところ、IL-6が最も強い相関を示した。以上より、重症弁膜症例における術後高ビリルビン血症の発生には、術前よりのサイトカインネットワークの異常の関与が示唆された。 2、 左心補助装置装着症例を装着術後のTBが術後1週間を経ても異常値を示していた高ビリルビン血症長期遷延群(H群)と正常値に復していた非遷延群(L群)にわけ、術前のAST,ALT、HA、TB,ChE、CRP,IL-6,IL-8に関して比較検討した。その結果、AST、ALT、HAは有意差を認めなかった。TB、ChEはH群で有意に高値であった。CRP、IL-6、IL-8はH群で高値の傾向を示したものの有意差は認めなかった。以上より、術前のTBおよびChE値が左心補助装置装着術後における高ビリルビン血症遷延の予測因子の1つとなる可能性が示唆された。 3、 心臓外科領域における、肝機能異常合併症例は慢性肝炎、肝硬変合併症例とうっ血肝合併症例に大別される。これらの症例では、術後肝不全を含む合併症を引き起こさないように術前はもちろん術中術後管理に留意する必要がある。これらの症例における生存例と死亡例の術前因子(GPT,TB,プロトロンビン時間、ChEおよび術後出血量を比較した。その結果、術前のChE値がその予後評価に有用である可能性が示唆された。
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