研究課題/領域番号 |
09557121
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
脳神経外科学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
矢崎 貴仁 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (80200484)
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研究分担者 |
星 道生 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00265844)
植村 慶一 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90049792)
河瀬 斌 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40095592)
須川 誠 中外製薬(株), 研究主査
戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20217508)
寺尾 聡 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70276278)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
11,400千円 (直接経費: 11,400千円)
1999年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1998年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1997年度: 6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
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キーワード | 脳腫瘍 / 単純ヘルペスウイルス / 浸潤抑制因子 / サイトカイン / 遺伝子治療 |
研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)の変異株のうち、湿度感受性に複製増殖するtsK、または増殖腫瘍細胞特異的に複製増殖するG207をヘルパーウイルスとして、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)発現脳腫瘍細胞の浸潤を抑制することが知られているTIMP2を発現する非増殖型HSVベクター(detective HSV vector)を作成した。2.ザイモグラム、ウエスタンブロット、免疫細胞化学染色により、組み込んだTIMP2の発現を確認した。3.リバースザイモグラムにより、発現させたTIMP2活性を定性的、定量的に解析した。その結果、defective HS V vectorから発現するTIMP2は、37℃でMMP活性を抑制することが明らかとなった。4.in vitroにおけるplaque forming assayではTIMP2発現defective HSV vectorは、HS V-tsKやHS V-G207の細胞傷害活性に影響を与えなかった。5.transwell chamberに用いた細胞浸潤活性の解析の結果、defective HSV vectoryより発現させたTIMP2は有為に浸潤を抑制することが明らかとなった。複製型ウイルスとの組み合わせではHSV-G207と組み合わせた場合に、細胞特異性・傷害効果ともに最大であった。6.in vivoでは、皮下腫瘍移植モデル、頭蓋内腫瘍移植モデル両者において、TIMP2発現defective HSV vectorはHSV-G207のウイルス両方の効率を有為に上昇させた。7.上記と同様の方法を用いてIFNγを発現するdefective HSV vectorを構築し、坑腫瘍作用を解析した結果、HSV単独投与に比較して抗腫瘍効果が高まった。8.TIMP2発現ウイルスと比較検討した結果、TIMP2発現ウイルスのほうがより強い抗腫瘍効果が得られることが判明した。9.in vivoの解析では、G207のみ、G207+IFNγ、G207+TIMP2、G270+IFN+TIMP2の順に効果の増大が認められた。10.膀胱癌を用いたin vivo解析:Intravesical therapy、静注による血管内投与ともに著明な腫瘍抑制効果が認められ、多臓器への副作用は認められなかった。HSV-G207をヘルパーウイルスとして機能遺伝子を同時発現するHSVベクターを開発し、TIMP2とIFNγを付加することで治療効果が増強することが判明した。毒性減弱型G207は、膀胱内投与や静脈投与が副作用なく可能であることが示唆された。今後進行癌を含めて応用範囲を広げられるのか詳細な検討をしたいと考えている。12.HSVに高い感受性を有するサルを用いて、詳細な副作用の検討を行った結果、G207の治療的投与では標的腫瘍以外には副作用の発現がないことを確認した。11.defective HSV vectorが、効率よく神経系に遺伝子を導入できることを証明するための基礎的解析を並行して行い、細胞接着分子L1をアストロサイトに効率よく発現させうることを証明するとともに、将来腫瘍治療後の機能再建の際の神経再生誘導を発揮する一助になると考えられるL1の機能解析を一部継続して行った。以上より、今後条件複製型HSVを基本としていくつかの遺伝子発現や投与法の組み合わせと検討する事により、安全性と効率の高い遺伝子治療を開発できる可能性を示唆する有意義な結論を得る事ができた。
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