研究概要 |
本研究では,生体関節の力学機能試験を行うことの可能な,6自由度力学機能試験ロボットシステムを開発し,このシステムを用いて,生体関節構成要素の機能発現のメカニズムを明らかにすることを試みた。 (システムの開発) 試験対象である生体関節を6自由度のリンク機構にモデル化し,リンク機構の数学的な記述を行った。位置と姿勢に関する記述には同次変換を,力とモーメントに関する記述にはヤコピアンを用いた。対象関節を,膝関節,股関節,肩関節,肘関節とし,それぞれの関節の臨床における運動表現方法を考慮して,リンク機構へのモデル化を行った。その後,既設の6軸マニピュレータのハンド先端部に新たな機構を付加するための設計・製作を行い,システムのハードウエアを完成した。このハードウエアをロボットシステムの駆動部として使用し,先に求めたマニピュレータの機構記述の結果,およびシステムに関する機構記述の結果を用いて,システムを完成させた。軟組織に生じる張力の測定のために,6軸力センサの出力を座標変換し,軟組織に生じる張力を測定する方法を採用し,計測プログラムを作成した。システムの性能評価試験において,500N負荷時の誤差が120μm以下,剛性は上下方向に970N/mm.前後方向に1040N/mm,左右方向に310N/mmであることが分かった。 (計測・解析) システムを用いて,ヒト,およびブタ膝関節を試験関節とし,外荷重作用時における膝の運動挙動,及び靭帯,半月の機能を調べた.その結果,1) 前十字靭帯内の張力分布が屈曲角度に依存し,伸展位及び軽度屈曲位では前内側部と後外側部が,屈曲位では後外側部が緊張していること,2) 膝への直動負荷に対しては主として十字靭帯が,回転負荷に対しては主として半月板が抗していること,3) 半月板の機能が,関接間力や十字靭帯損傷の影響を受けること,4) Bi-socket再建法による前十字靭帯再建術は,術後の膝安定性を良好に保つ方法であること,等が分かった.
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