研究概要 |
本研究の最終自的は,炭酸アパタイトの電気化学的コーティング技術を確立し,機能回復を早期に実現することが可能である生体活性の高いインプラントをカスタムメイドで作製するシステムを確立することである.平成9年度は200℃までの水熱・電気化学的合成した炭酸アパタイトの粒子形態および状態分析を行い,合成条件と析出結晶との関係を評価した.電解液温度を変えた実験では,150℃での針状のハイドロキシアパタイト結晶析出量が最も多く,また最もc軸の配向性が大きかった.これは電解液温度の上昇によるリン酸カルシウム塩の溶解度の減少とpH上昇の抑制という相反する作用の相互効果によるものと考えられた.一方,SEM,XRDおよびFTIRを用いた状態分析結果より結晶性および大きさは電解液温度の上昇に伴い大きくなり,200℃では幅7μm,長さ240μmと比較的大きい結晶が得られた. 平成10年度は反応速度論的研究より,この水熱・電気化学的析出現象の機構解明を試みた.重量増加すなわち析出物量は電流負荷時間の経過に伴い,増加した.負荷時間の平方根に対し,直線回帰した場合,150℃での増加が最も傾きが大きく,次いで100℃,200℃の順であり,それぞれ,8.92,6.04,5.38mg/min1/2であった.これらの析出物は,XRD図形の測定結果によればすべてc軸に配向したハイドロキシアパタイトであり,配同性は100℃および150℃の場合,負荷時間の経過とともに大きくなったが,200℃での配向性は最も低く,負荷時間の経過による変化は認められなかった.電解放射走査型電子顕微鏡観察より,ハイドロキシアパタイトの六角柱状結晶は負荷時間の経過とともに大きくなり,六角形の一辺の長さおよび長軸方向の長さは,負荷時間の平方根に対し直線的に増加し,電解液温度が高い方が成長速度が大きかった.また,100℃および150℃の場合,基板に対しほぼ垂直に長く成長し、長軸方向の成長速度の方が六角形の一辺の長さ,すなわち軸の太さの成長より大きかった.一方,200°Cの場合,基板に対する角度はバラツキがあり,長軸方向と太さ方向は同じ成長比率であった.以上のことより,針状のハイドロキシアパタイト単結晶がc軸に沿って細長く成長するのは拡散律速であり,基板に対する成長の傾き,すなわち配向性は電解液温度により変化した.
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