研究概要 |
少量のピリジニウム基を主鎖に導入したポリメタクリル酸メチルが生分解されるという新しい発見を基礎に,化学構造の一部を修飾して合成高分子に生分解性を付与する一般的な手法を開発する研究を,平成9年度に引き続いて行った。N-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドを導入したポリメタクリル酸メチルとメタクリル酸メチルのホモポリマーをブレンドして生分解実験を行ったがメタクリル酸メチルのホモポリマーは全く分解しなかった。高分子材料全体の微生物に対する親和性を高めても生分解に結び付かず,主鎖にピリジニウム基を導入する必要のあることが分かった。ピリジニウム基としてはこれまでN-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドを用いて来たが様々なピリジニウム基について検討したところ,N-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドよりもN-アリル-4-ビニルピリジニウムブロミドおよびN-メチル-4-ビニルピリジニウムヨージドの方が生分解性の付与に効果的であった。N-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドを導入したポリメタクリル酸メチル,およびモデル化合物としてN-ベンジル-4-エチルピリジニウムクロリドを用いて生分解反応に関する分子レベルの研究も行った。モデル化合物を用いた生分解反応の主要生成物は4-エチルピリジンであった。生分解の処理を行って回収したN-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドを導入したポリメタクリル酸メチルのポリマー試料を分析すると塩素が失われていた。これらの結果から,N-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドを導入したポリメタクリル酸メチルの生分解における重要な過程に塩化ベンジルの脱離が含まれることが分かった。ポリヘキサメチレンアジパミドの主鎖にピリジル基を導入すると活性汚泥の作用で分解されることが分かり,この手法がビニルポリマーに限らず,重縮合反応で合成される高分子にも適用できることが分かった。
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