研究概要 |
1. B"サブユニットのスプライス変異体の同定-ヒトの大脳皮質より,B"サブユニットのスプライスバリアントをコードする2種のcDNAを単離した。これらはN末端付近の32個または106個のアミノ酸残基からなる領域を欠失していた。これらのcDNAをpGEXベクターに組み込んで大腸菌に導入し,B"サブユニットのスプライスバリアントとGSTとの融合蛋白を発現させた。今後さらにB"サブユニットの他の領域を欠失させた変異体もGST融合蛋白として作成し,これらとPP2AのAC二量体との結合能を調べ,結合に関わる領域を同定する。また,これらのGST融合蛋白のACの酵素活性におよぼす影響を検討し,活性阻害に関わるB"の領域を決定する。これらの領域のアミノ酸配列にもとづいてPP2Aの阻害ペプチドをデザインする。 2. AキナーゼによるB"サブユニットのリン酸化とB"ACの活性化-B"ACは試験管内でAキナーゼによりB"のSer-60,Ser-75,Ser-573がリン酸化され,B"ACのHlおよびH2Bヒストンに対するホスファターゼ活性が促進された。したがって,これらのリン酸化部位の周辺の構造がB゙によるACの活性阻害に関与している可能性がある。これらの領域のアミノ酸配列に基づいてPP2Aの活性を阻害するペプチドのデザインを試みる。 3. 酵母Two-Hybrid法を用いたB"結合蛋白の同定-B"ACの三量体PP2Aの活性や細胞内局在を制御する蛋白を同定する目的で,酵母Two-Hybrid法を用いてヒトB"に結合する蛋白を探索した。まず,GAL4転写活性化ドメインとの融合蛋白を発現するヒト大脳cDNAライブラリーを調製した。つぎに,転写因子GAL4のDNA結合ドメインとヒトB"との融合蛋白を発現する出芽酵母株を作成した。この株にライブラリーDNAを導入し,リポーターであるHIS3遺伝子の発現を指標にしてスクリーニングした。これまでに120万個のクローンのスクリーニングにより78個の陽性クローンが得られている。今後,B"とこれらのcDNAにコードされる蛋白との結合に関わる領域を決定する。これらの領域のアミノ酸配列にもとづいてB"ACの三量体PP2Aの機能を阻害するペプチドのデザインを試みる。
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