配分額 *注記 |
8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
1999年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1998年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1997年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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研究概要 |
最新の分子細胞生物学的知見を取り入れた膜動輪送機構の力学的解析及びそれに基づいた独自の生体紬胞膜変形解析用有限要素法の開発とこれによる新たなシミュレータシステムの開発の成果について述べる. 1.膜動輸送の力学的解析によるシミュレーション : 解析的手法により,連結小胞及びチャネルの力学的挙動をシミュレートする手法を提示し,以下の新たな知見を得た. (1)球形膜シェルの開口部を軸に平行に保持して開口展開していくと,わずかな開口半径の変化で大きく形状や張力などのパラメータが変化する位置が数カ所存在する.これは自然曲率を有する膜の,ある種の座屈のような現象と考えられる. (2)連結小胞の繰り返し部では,円筒状および砂時計状のエネルギー的に安定な形状が見出された. (3)以上のことから,連結小胞およびこれから派生した円筒状チャネルがエネルギー的に安定な形状の一つとして血管内皮細胞内に生成され,存在し得る可能性が理論的に示された. (4)面内せん断及び周辺細胞膜の影響を考慮することにより,実際に電子顕微鏡で観察されている結果により近い形状を得ることができた. (5)2重小胞の場合は,小胞やそれに近い形状が縫持される区間は,開口開始後のごく狭い範囲にあり,この間では開口半径の微小な変化で展開形状も劇的に変動する.また個々のくびれが消失する際,ひずみエネルギにジャンプ状現象の存在が確認された. 2.膜動輪送シミュレータ用有限要素法の開発 : 汎用数理解析ソフトMathematicaを利用し,特に生体膜の大変形解析を夕ーゲットとする独自の有隈要素法の開発を行い,以下の新たな知見を得た. (1)弾性ポテンシャル関数を用いた大変形解析用有限要素法の定式化を提示し,半球形生体膜シェルの大変形解析を行い,膜に圧力を印加する事により表面積一定条件を満足させ得ることを明らかにした. (2)表面積一定条件は,変形形状に大きな影響を及ぼす.特に展開における変形形状では開口部付近の要素の伸びに対応し,表面積の増加を抑えるために小胞の形状が大きく変化することを明らかにした. (3)物性値として,Mooney-Rivlin体型ゴム製赤血球膜解析に用いられる定数を使用した結果,変形過程における膜張カは0.003-0.18[dyn/cm]となり,既知の実験結果である0.03[dyn/cm]を支持する値を得ることができた.
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