研究概要 |
レトロポゾンの一種であるSINE(Short interspersed repetitive element)の配列がゲノム中のオルソロガスなサイトに挿入されているか否かという情報に基づいて鯨目各種間の遺伝的な差違を検出する試みを、フランキングPCR法により行った。その結果、次の科または上科に分類される鯨種にそれぞれ特異的にSINE配列の挿入を示す遺伝子座(括弧内に示す)が単離された:イルカ上科(Mago19)、アマゾンカワイルカ科(Amz11)、アカボウクジラ科(Tuti24,28,35)、マッコウクジラ上科(Spm4,9,13,15,49)、ナガスクジラ科(Hump20,203) 。また、それらに加え、マッコウクジラで種特異的にSINE配列挿入を示す遺伝子座(Spm2,10,14)が単離された。以上の遺伝子座を増幅する条件でPCRを行い、SINE配列の挿入を確認することにより、それらの分類群を直接同定することができる。さらに、上記とは独立に単離された23個の遺伝子座(遺伝子座名を省略)は複数の科もしくは上科間でSINE配列を特異的に共有していることが明らかになった。これらの遺伝子座は複数組み合わせでPCRで検出することより、より詳細な科または上科の同定が可能である。以上の結果は、簡便かつ正確な大型鯨類の同定という観点からみてレトロポゾンの適用が極めて有効であることを示唆している。今後、同手法を用いた解析を進めることにより、ざらに種レベルまで同定可能な遺伝子座を同定することが可能になると思われる。
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