カトマンドゥのネパール国立公文書館に保存されている、いわゆる「ベンドール写本」には、既に原典が失われた重要な仏教文献の断簡類が多く含まれているにもかかわらず、その発見者であるベンドールの死後、学界で忘れ去られ、国立公文書館に死蔵されたままになっていた。本研究は、忘れられたベンドール写本を再調査し、正体の判明したものからテキストを作成して、インド仏教の原典研究に貢献することを目的とした。研究期間中にベンドール写本のほぼすべてをマイクロフィルムで入手し、調査と分類作業を行い、未同定写本断簡の解読研究を行った結果、本研究の代表者は新たに『瑜伽論の摂異門分』『瑜伽論の摂決択分』『中阿含経』『根本有部律』『倶舎論註釈書』といったインド仏教研究における基本文献5種の梵文断簡を発見し、それらから回収されたテキストを研究報告書の中で発表した。
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