研究概要 |
本研究の目的は,申請時の研究計画書においては次のように掲げていた。現在の日本における看護の臨床や教育の場にあっては,その基礎となる看護理論の多くが,欧米で開拓されたいわゆる科学的看護論に依拠しているといっても過言ではない。本研究では,現代看護において志向される患者側に立った全人的看護論の一つとして,さらには今後の日本やアジアでの活用を意図して,仏教の智慧や方法論を活かした仏教看護学の開拓と,その体系化を行うことが目的であった。そして,より具体的には,仏教看護学という科目設定と開講を睨んでのテキスト作成と,それに伴うカリキュラム案作りということであった。 3年間の研究遂行は,当初の目的を全て果たすまでには至らず,遺憾といわざるを得ない。しかし,当初の目的のうちで,具体的な仏教看護学という科目設定に関しては,飯田女子短期大学看護学科において,平成11年度入学生から実施されている。基礎看護学,成人看護学などと並ぶ教科目の位置づけとして仏教看護を設けた新たなカリキュラムにおいて,仏教看護論(1単位必修),ビハーラケア論1(1単位必修),ビハーラケア論2(1単位選択)を開講できたことは,本研究の成果である。テキスト作成に関しては,本研究の成果報告書とともに,研究分担者・藤腹明子著『仏教看護----日本的看護論の可能性を求めて---』(2000年,三輪書店)が,形となった。 尚,本研究の骨格ともいえる仏典関係の資料検索については、若手の研究協力者の協力の下に基礎作業が進展しているが,その作業は膨大なものであり,短期間での完結が困難であることの確認に至ったことは,一つの成果といえよう。ついては,この仏典からの資料検索作業は今後も継続し,1〜2年後に改めて研究助成の申請をしたい。
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